お皿を洗いながらぼーっとため息をついていた。知らない女と男と一緒に住むのに疲れていた。女と男は元・カップルらしく、ときどき思い出したようにそれを私にアピールしてくる。料理の腕を競ってくるのもとても面倒くさかった。
窓からぼんやり下を見ていた。そこはたぶん8Fくらいの高さで、色々なものが見える。何にも焦点を合わせずにぼうっとぼんやりと、水を出しっぱなしにして、スポンジをフニフニしながら、見ていた。
手足が長くてひょろ長い、別の知らない男が階段を上ってきて、抱きしめられた。アンガールズに入れそうなかんじの人で、でもなんだか私を助けてくれるヒーローみたいに感じた。ひと通り元・カップルに文句を言ってくれた。私が安心しきったら、その人は消えた。
家を出て行くことにした。元・カップルの女の顔に見覚えはなかった。その友達にも声をかけられたが、やはり見覚えはない。「吉祥寺のスーパーは高くてあまり何も買うことができないのよー」と言っているが、やりくりできることを自慢しているようだった。吉祥寺ってそんなに高くなかった気がする。
イチョウの葉っぱが売っている。枯れている。